Japanese (Shift JIS)

♪GOLDMUND Mimesis SRI2

♪購入

アンプのアップグレードは半年ほど前から考えていましたがコンポーネントの性格から単独で試聴してもその効果は明確には解りづらく、何となく高級機種に憧れているだけの状態が続いていました。「次はセパレートだよね」という周囲の期待(苦笑)はありましたが設置場所の問題や、プリ〜パワー間のケーブル・それぞれのインシュレータなどのセッティング要素が増え過ぎるのを嫌ってプリメインにすることだけは決めていました。

同じ頃に電源の改善に取り組んでいて、その成果としてPMA-2000への供給電力を改善することで大幅な音質の向上が得られました。同時に、アンプの能力がいかに大事かを再認識し、アンプのアップグレードに弾みがつきました。PMA-2000を改善したことが自身の退役を早めることになるとは皮肉というかマニアの業の深さを現していますね。

この頃試聴した機種と感想は以下の通りです。

Accuphase E-407
509sと比較試聴した印象では、高域がややキラキラしていました。シンバルの音はスティックが金属を叩く“カツン”に加えて“シャラン”という響きが載っていました。レンジは広いです。解像度は悪くありませんが、やや見通しが悪く感じました。静寂感は509sと同程度かな?
LUXMAN L-509s
音に芯があり解像度が高いながらもボリュームのあるものでした。シンバルの音はいかにも鉄を叩いたような音がして、響きの違いからシンバルや演奏技法の種類を描き分けるところに魅力を感じました。音場は広く、立体的に聞こえました。E-407よりボーカルは滑らかです。BOWの2機種と比較すると静寂感はいまひとつでした。
SANSUI α-709NRA
ボーカルの滑らかさなら最高でした。ソース自体にやや難のあるJPOPの曲(『Brilliant』野田順子)がとても耳障り良く聞こえました。谷山浩子の声もいい感じでしたが、曲全体の印象がやや無難な感じになるので、私の好みから言うと物足りなくなる危険性を感じました。上記2機種とは随分違った音なので聴いてみる価値はあると思います。
BOW WAZOO XL
谷山浩子が謎な鳴り方をしました。まるで位相がおかしいようなそれでいて幻想的なものです。静寂感は良いです。その点は好みで興味を持ちました。ところが『Brilliant』が良くありませんでした。肉付きや旨味が感じられない、がりがりでスカスカな音になってしまいました。
BOW ZZ-One
谷山浩子、『Brilliant』はWAZOO XLと同じでした。イメージではひたすらすっきり涼やかなのかと思っていましたが、なかなかしっかりした鳴り方でした。また、普段聴かないのですが、オーケストラをかけたところ各パートの音の定位が綺麗な層状に重なって聞こえ、美しいオーケストラの鳴り方のひとつの例を体験しました。

これらを聴いた時点ではしっくりしたものを感じていませんでした。さらに個性的な音を求めて海外製アンプ Krell 300i,500i、Musical Fidelity A3やBrystoneなどを聴いてみたいと思っていましたが、予算を越えています。中古品を探してWebをさ迷っていたところDynamicAudioで本機の中古を見つけ、すぐその週末に試聴の予約を入れました。それから各雑誌のバックナンバーを漁り、自分の好みと合うことを確認しました。GOLDMUNDというメーカに対しての憧れ……。すでにこの時、聴いた印象が悪くない限りは買ってしまうことが決まっていたような気がします。

試聴環境は、CDプレイヤにEsoteric X-50W、スピーカにB&W Nutilus 803。試聴曲はいつもの『笛吹き』谷山浩子に、『Brilliant』野田順子、『それぞれの未来へ』中司雅美、『君に逢えてよかった』林原めぐみ。

まず感じたのがボーカルの定位の良さ。スピーカ間は2m以上離れている状態でボーカルがビシッと定位して、しかも口が小さい。まるでボーカリストの周りだけS/N比があがったような綺麗なサウンドステージでした (これはスピーカの資質でもあると思います)。やや艶ののった甘めの声色。同じ試聴環境でアンプをBOW WAZOOにして『Brilliant』を聴いたときに感じた神経質なきつさはなく、状態のあまり良くないソースも楽しく聴かせる遊びが感じられました。厳密さと遊びを合わせ持っていることはまさに求めていた資質です。雑誌の評価ではこのアンプで音楽を再生すると部屋の温度が3℃下がるような印象を受けるとありましたが、あまり感じませんでした。好みを言えばひんやりしてもらって構わないのですが、ペアを組むDynaudio Audience80もややクールなところがあるので、良い傾向と感じました。

すっかり気持ち良くなってしまった私は、店員さんにものせられ、購入してしまいました。


作りの印象ですが、結構素っ気ないです。取説がなかったために本体に付いているMuteとMonitorのレバーの使い方が解りませんでした。ONと表記されているほうに倒すとそれぞれの機能が有効になります。電源スイッチは背面です。常時通電しておけということでしょう。脚はゴム製です。コストダウンのためか? 音作りのためか? 値段が値段なだけに解釈に迷います。GOLDMUNDのアンプは回路はほぼそのままに電源や外装で差をつけているとの解説を雑誌で読んだことがあります。付属の電源ケーブルはいまいち頼りなさそうです。ここは、電源ケーブルやインシュレータを奢ってやるのが良いかもしれません。スピーカ端子は1系統のみ。スーパーウーファはどうしましょうね。端子孔は極めて小さく、5mmほどでしょうか。基本的にバナナプラグかYラグを使うことを意図しているようです。GOLDMUNDはバナナプラグを用意しています。

GOLDMUNDといいますと「部屋の温度が3℃下がるよう」「聴いていると正座したくなる」のように非常に厳格なイメージがありました。もちろんそれを期待していたのですが、我が家に来てAudience80を鳴らして出てきた音は予想以上に暖かい音でした。冷たく厳しい音にどうやって血を通わせ、自分好みの質感に整えて行こうかと身構えていた私には正直少々残念でした。この小振りなアンプは3WayのAudience80を楽々鳴らしてスピーカから音を解き放ち、とても立体感のあるサウンドイメージを作ってくれました。情報量も増えているのですが、私の耳では全てを聞き取れず戸惑ってしまうほどでした。

構成セッティング
2000,05,21 2000,05,21

♪ギャングエラー

ステレオ(プリ)アンプ(これからはマルチチャンネルアンプと言ったほうが正確でしょうか?)の左右のボリュームがうまく連動しないで、音が片方に寄ってしまうことを“ギャングエラー”と言います。安価なアンプ特にAVアンプなどで起こりやすく、保証の範囲に含まれるか微妙なために問題になっている……ということは知っていました。しかし、それがGOLDMUNDのアンプで発生するとは夢にも思っていませんでした。購入店に相談したところ幸いにも輸入代理店であるステラボックスジャパンにて無償で調整してくれるとのことでした。今回の不具合が解ったのは夜間のごく小音量での再生時でした。また、使用していたスピーカ Dynaudio Audience80の能率が89dBとやや高かったのも裏目に出ました。GOLDMUNDとしては能率の高いスピーカを小音量で鳴らすことは重視していなかったようです。と言っても内部で調節する機構は用意してあるそうで、抜かりはないですね。3週間の入院を経て、SRI2は8dBほど鈍くなって戻ってきました。言い換えると、私のシステム向けにチューンされてきた訳で、ちょっとカッコイイかな?


♪チューニング

CDを雑多にかけながら音の傾向を再び探っていきました。PMA-2000のほうがチューニングが合っているので音楽の雰囲気は良いのですが、Mimesis SRI2の情報量は圧倒的で、「アンプを変えると音が変わる」ことを予想以上に思い知らされました。その圧倒的な情報量のために、アンプのキャラクタに振り回されているようで、いまいち音楽自体に入り込めませんでした。

『降るプラチナ』(新居昭乃)を聴いてみました。透明感の高い楽曲・ボーカルが魅力です。非常に良い感じでしたが、より透徹とした雰囲気が欲しかったのでオーディオリプラスの石英インシュレータOPT-1を使ってみました。支える場所は向かって左の前後の角、右側面の中央の3点支持です。一見変わった配置ですが、SRI2はトランスが左側に寄っていて重くなっているのでそこを選びました。音はより整然としました。情報量は増えているのかもしれませんが、これ以上増えても私の耳が受け付 けないような気がします (苦笑)。なお、電源ケーブルはLUXMAN JPP-10000を利用しました。

インシュレータはそのまま、岩ちゃんのファーストアルバム『はじめまして』から『はじめまして』。岩ちゃんのボーカルと岡崎律子さんのコーラスだけのシンプルな曲の物凄く気持ちのいい場が展開しました。コーラスが私の頭と左右のスピーカのスコーカを通る円盤を形作り、まるで土星の輪のよう。その声のベール向こうに岩ちゃんがぽつんと立っていました。ボーカルの実在感も素晴らしいことが解りました。

PMA-2000に比べて低音の質が断然向上したので奥井雅美をかけてみました。ビートの激しい曲です。しかし、期待したほどではありませんでした。ボーカルも演奏も綺麗すぎて、情熱を現す荒々しいソリッドなタッチが欠けてしまっています。また、情報量の多さに惑わされていましたが、音色的には基本的に甘い音であることが解りました。そのため原始の感情を震わせるような曲は苦手かも知れないと思いました。これに対応して、音に弾みがつくことを期待してThe j1 project CN35Sを使ってみました。ボーカルがちょっと変な感じです。弾み過ぎでしょうか、なんだかエコー感がしました。次はTAOC TITE 46PINを試しました。重量級のインシュレータは薄型アンプには不釣り合いですが、本体に物量がないのを補ってくれることを期待しました。設置はピンを下にして、PTS-4で受ける形にしました。音はすっきりしすぎましたが、ボーカルがやや前に出てきたようです。金属にありがちな嫌な響きは感じられませんでした。

日を置いて電源ケーブルを交換してみました。PMA-2000に大きな効果をもたらした自作のsupremo電源ケーブルです。あまり変わったようには感じませんでした。全体にマッシブな傾向を帯びたような気がしましたが、アンプのキャラクタに影響を及ぼすほどではありませんでした。さらに日を置いて、自作のSPK-6.7電源ケーブルを試しました。これは付帯音が比較的多くて量感を感じさせる音、supremo電源ケーブルは付帯音が少なくて曲にかけられたディレイの時間まで計れそうな音でした。そしてJPP-10000はその中間といった感じでした。いずれも情報量に不足ないのですが、いまいちピンと来ませんでした。ここでは、リアリティ追求ということでsupremo電源ケーブルをしばらく使ってみることにしました。

また、壁コンセントに近い口からCDプレイヤの電源を取ると良いという話を聞いたので試しましたが、差は感じませんでした。

2001/04/02 記

構成セッティング
2000,06,18 2000,06,18

♪天板の振動

試聴にきた知人に天板の振動の影響を指摘されたので対策を施してみました。天板に重石をすることにしましたが、重石自身が鳴く素材ですと却って悪影響を及ぼしかねないので重めの雑誌にしてみました。重い雑誌と言えば『StereoSound』誌です。

エッジの強調感が薄れ、滑らかな音になりました。その分、やや大人しい抑圧されたとも言えそうです。曲によっては増やしたり取り除いたりと調節して、自分好みのバランスにするのがよさそうです。それにしても、安価なアンプみたいなチューニング法で嫌ですね。

2001/04/02 記

構成セッティング
2000,08,21