Japanese (Shift JIS)

♪アンプとスピーカの関係

私はこれまでに2モデルのアンプとスピーカを使ってきました。初めはDENON PMA-2000AR 218Vの組み合わせでした。そしてスピーカをDynaudio Audience80にアップグレードしました。この時、「PMA-2000では鳴らし切れないのではないか?」という疑問を持ち、試聴の際にPMA-2000を用意してもらい慎重に判断した上で購入に踏み切りました。では、PMA-2000Audience80を鳴らし切っていたのでしょうか? わざわざ取り上げているのですから答えは当然「No」です。うーん、正確には半分Yesで半分Noだったのです。

218VからAudience80へ。大幅なアップグレードを遂げながら、同じ不満が解消せずにいました。音場に奥行きが感じられなかったのです。スピーカがAudience80になって解像度や左右の定位が向上し、音ひとつひとつの精緻な美しさは得られました。ところが音楽全体は左右のスピーカの間に張ったスクリーンに描かれているようでした。それはそれで魅力的なサウンドイメージだったのですが。「このイメージはAudienceの個性なのだろう」そして、奥行きが出ないのは部屋の影響もあるに違いない……そんな思い込みを壊したのは、PMA-2000の電源ケーブルの交換でした。

対策の内容は『電源ページ』を参照していただくとして、Audience80の鳴り方は大きく変わりました。音は粒子となりスクリーンを飛び出しました。シンバルがシャーンと鳴る音はトゥイータからまっすぐ私の耳へ疾ってきて耳元で弾けます。アコースティックギターはそのボディの震える音が楽器の大きさを想像させます。奥行き感はまだまだですが立体感は大きく向上し、一歩“スピーカを意識させない音”というものに近づいたと思います。つまり、PMA-2000Audience80を完全とは言えないかもしれませんが鳴らすだけのポテンシャルを持ちながら鳴らし切れていなかったのでした。これが「半分Yesで半分No」の正体です。恐らく218Vもその実力を発揮させてやらないまま、第一線から引き摺り落してしまったのでしょう。かわいそうなことをしたと思います。

このページでは電源の大切さではなくアンプとスピーカの関係に話を絞りたいと思います。この後、アンプをGOLDMUND Mimesis SRI2にアップグレードすることで、更に立体的な音場を創造するようになりました。アンプのアップグレードは解りづらい。私もつい最近までそう思っていました。確かに音色や解像度という点では大幅な変化はないのかも知れません。しかし、このページに書いたように“鳴りっぷり”を支配するのはアンプだと考えるようになりました。ボーカルの実在感、ジャズのスイング、オーケストラのうねり。音楽を音楽らしく楽しむためには“鳴りっぷり”こそ欠かせない要素のひとつだと思います。逆に、音の美しさを求めるならまずはスピーカでしょう。一点豪華主義の指針として「HiFiオーディオ的な楽しみを求めるならスピーカに注力、音楽的な楽しみを求めるならアンプに注力」というのはいかがでしょうか? もちろん、その次は逆のコンポーネントをアップグレードするのですよ (笑)。


番外編です。と言うよりもこちらを書きたかったのです。音に立体感を与える。ホームシアター(マルチチャンネル・オーディオ)の場合はどうでしょうか? 私は未経験なので想像するにふたつの考え方ができます。

  1. ホームシアターこそ立体的な音響を目指している。スピーカを多数必要とするために安価なスピーカを選択したとしても高品質なアンプ(AVアンプならなおのこと)が必要になる。
  2. マルチチャンネルのソースには元々立体感をもたらす残響成分が含まれている。無理にスピーカを奮い立たせる必要はなく、高品質なスピーカで再生してやれば良い。

まるっきり反対ですね。究極的にはどちらも重要なのは2chも同じです。そうは言っても諸般の都合から簡単には実現できないのは皆さん同じだと思います。そこを悩むのも楽しみのひとつですが、すでに実践している方、ご自分なりの答えがありましたら教えていただけないでしょうか?

2000/07/05 記